Windows版を待てないなら

近年、商用ドキュメンテーション業界で使われているMacとWindowsのどちらが多いかはわかりません。なんとなく小さい制作会社や個人ではMacが多く、中規模以上の企業はWindowsといった感じではないかと思うけど、どうでしょうか。

さて、Windows版のXORのリリースにはまだしばらく時間がかかります。Macの場合とは違ってMicrosoftが提供する開発環境にはPDFハンドリング用APIが揃っていないのでMac版よりも開発が難航するかもしれません。

よって、XORの価値を認めていただけるならWindows版のリリースを待たず、中古か整備済み製品のMac miniあたりを導入することをお勧めします。

Mac mini 2018
キーボードは付属しないのでMac用を調達した方がいいでしょう

XORはサブスクリプションで提供されるのでひとまずMac版を導入し、Windows版がリリースされたらMac版を解約してWindows版に乗り換えるのがいいかと。

しかもMacにWindowsをインストールすればWindows機として使うこともできます。これほどスタイリッシュでコンパクトなWindows PCなんて他にありませんよね?

なぜMac版のみ?

XORは現状Mac版のみです。Windows版は後日のリリースとなります。

macOS Mojave
macOS Mojave

前世紀、DTPといえばMacの独壇場だったけど、2000年前後のAppleの破綻危機や2003年にAdoboe Creative Suite(Windows版あり)の発売を受けて、Windows派の制作者が増ええました。Macとは違い国産メーカーのPCも選べたし(お得意様の系列会社から仕入れたりもできた)、本体だけなら割安なWindowsの方が日本企業には導入しやすかったのでしょう。

私に言わせれば商用ドキュメントのWindows制作なんてクレイジーな選択で、Macの方が生産性がはるかに高いと思うのだけど、その話はまた別の機会に。

実際、私が昨年まで勤めていた都内の大手制作会社や、その前にいた横浜の大手にしてもスタッフ全員への割り当てはWindows PCで、別途共有のMacが数台あるだけといった感じでした。

よって、XORの開発者を探している段階ではWindows版→Mac版という順番でリリースするつもりだったものの、委託の合意に至った開発者がWindowsよりもMac & iOS向けの開発に慣れていたので考え直しました。新たなアプリの開発では途中で予定外の仕様変更が発生しがちなことを踏まえると、慣れたMac開発で仕様を固めてからWindowsに移植するのが賢明だろうと。

加えて、Macの開発環境にはPDFを扱うためのAPI群が揃っているけどWindowsにはそれがないのでサードパーティ製の有償PDFライブラリを導入する必要が出てきます。もし何らかの理由でXORのリリースが叶わなかった場合、ライブラリの導入費用は無駄になってしまいます。

そのような背景から、Mac版→Windows版でリリースすることになりました。Windows版をお望みの方々、もうしばらくお待ちください。

XORのメインターゲット

私が想定するXORのメインターゲットは以下。

  • 中小零細の企業やフリーランスの個人としてドキュメント制作に携わっている人

そしてそのような人は今後増えていくと見ています。

PDF比較の重要性は説明するまでもないでしょう。日本ではちょっとした誤字脱字すら許されない風潮があるし、些細なミスでも大ダメージになりかねないので、完璧を目指したいところです。

そこで最も頼りになるアプリがProof Checker PROだけど、1ライセンス100万円超、または月々4.2万円〜なので、導入できるのは大きな組織だけです。

実は、私は約一年前まで都内の某大手ドキュメント制作会社に勤めていたものの、業績不振を受けて退職を余儀なくされました。「賃下げを飲むか辞めるか」の選択を迫られ、辞める方を選んだわけです。なにしろ、あのまま残っても会社の売り上げが急回復して私への報酬が元の水準に戻るとはとうてい思えなかったのですよね。

昨今、紙などの原材料費なども上がっているのだから、本来なら制作会社はクライアントに制作費の値上げ交渉をすべきだけど、下手に切り出そうものなら逆に単価の引き下げを求められ兼ねないので、固定費を切り詰めて乗り切るしかないと考えていたようです。正社員を最小人数に抑え、派遣やアルバイト、外注で補うのだけど、それでも持ちこたえられそうになければ、常駐の非正規雇用スタッフはもちろん、いよいよ正社員も減らさざるを得なくなります。私の退職もその過程で煽りを受けた形です。

とはいえ薄利多売のドキュメント制作業。スタッフが減ったからと仕事を断るわけにはいかないので、今後は「大手が受けた仕事を小規模な制作会社やフリーランスの個人が下請けで制作するケースが増えていく」というのが私の業界の見立て、近未来予測です。

結果、そのような制作者たちはProof Checker PROには手が出ないので、比較的安価な代替アプリを求めるはず。そこでXORも何とか一定数以上のユーザを得られれるのではないかと。

幸いなことにアプリを販売する上で、昔のようにメディアを焼いて一つずつ箱詰めし、流通網に乗せて売り上げを回収するといった経費はかからなくなったし、Mac App Storeでリリースすれば違法コピーの心配もいりません。

また、サブスクリプションが広く受け入れられてきたのも追い風です。XORを48,000円一括払いとかで売り出しても、どれほども売れないと思うから。

PDF比較で「どのように変わったか」は本当に要る?

Adobe Acrobat DCのPDF比較機能を使うと、修正された新旧PDFの間で「どこがどのように変わったか?」をリポートしてくれます。解析精度が完璧ではない点はひとまず脇に置いて、ここでは問題提起をしましょう。

  • 「どこが」はともかく「どのように変わったか」は本当に要るの?

例えば下図のようなDTP原稿があったとします(画像のクリックで拡大表示)。

DTP原稿の例

これに対してDTP担当者から下図のような修正結果が上がってきました。

DTPによる修正結果
残念ながら「太字の」という指示が反映されていません

よって新旧をAcrobatのPDF比較にかけるとこういう結果になります。

AcrobatによるPDF比較の結果例

「イザリウオ」が「カエルアンコウ」に変更された点は検出したけど、DTP原稿の「太字の」が反映されていないことには気づいてくれません。そう、Acrobatが見つけるのは「どう変わったか」であって「指示通りに変更されたか?」ではないのですよね。

だったらどうせ人間が確認しなければならないのだから「どこが変わったか」だけで十分ではないでしょうか?

XORは「どこが変わったか」だけを検出するアプリです。