九州が発展すると少子化ペースが緩まる説

前のエントリ『47都道府県のこどもの数』では沖縄と九州各県には子どもの割合が高いため、下記の仮説を立てました。

  • 九州に若い世代を中心とした人口を集めれば少子化ペースが少し緩和されるかも

でも、ふと疑問が。「高齢化率と付き合わせてみないと本当に九州が子育てに有利とは言えないのでは?」と。若い世代の割合が多くてこどもが増えているなら、九州各県が子育てに有利とも言えないでしょう。

そこで人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)をもとに47都道府県の高齢化率を表にしてみました。

47都道府県の65歳以上の割合(2024年10月1日)

こうしてみると東北と四国は高齢者の比率が高いですね。そして最も少ないのは当然ながら東京都。全国から進学や就職で上京する若い世代が多いので。

ただし、注意しなければならないのは高齢者の割合が低いからといって東京で高齢化の問題が起きないわけではないこと。東京では一極集中の副作用として高齢者、ひいては要介護者の数が激増していくけど、介護人材ではない若者がどれほど流入しようとも介護需要は満たされないので。まあ、それについてはまた別の機会に。

さて、肝心の九州はどうかというと、全国平均を下回っているのは福岡のみ。東京と似た理由でしょうね。近隣県から若者が流入しているのだろうと。

そして、こどもの割合で上位を占めている福岡以外の九州各県はすべて全国平均以上。ならば、それらは65歳未満の割合が比較的少ないにもかかわらず、こどもの割合は多いことになります。

よって「九州に若い世代を中心とした人口を集めれば少子化ペースが少し緩和されるかも」という説は成立しそうです。そういう未来を実現するには九州各県で若者を惹きつける就職口を増やす必要があるけど。

47都道府県のこどもの数

5月5日の「こどもの日」にちなんで、2024年10月1日現在におけるこどもの数(15歳未満人口)が発表されました。

47都道府県のこどもの数と割合(2024年10月1日)割合順

これを割合別に並べ替えるとこの通り(全国平均以上のみ)。

47都道府県のこどもの数と割合(2024年10月1日)

沖縄と九州各県にはこどもの割合が高いことがわかります。結婚が早い傾向の沖縄は当然として、意外にも佐賀が滋賀と並んで第二位。あの地味な佐賀が。

ならば以下の仮説が立てられます。

  • 九州に若い世代を中心とした人口を集めれば少子化ペースが少し緩和されるかも
  • 子供を持つにあたっては経済的な豊さよりも環境の要因が重要ではないか?

何しろ佐賀の発展度合いはそこそこです。動物園も水族館もないし民放テレビ局も一つ(フジテレビ系列の佐賀テレビ)しかありません。人口に至っては小数点以下まで数えても「少な目」です。

では、佐賀が思いっきり寂しいかというとそうでもなく、当然ながら普通に暮らしていかれる程度の商業施設や病院などはあります。

そして何より唐津(県内2位の市)や鳥栖(同3位の市)、そして佐賀市(同1位)にしても「必要なら博多に出向けばいい」という立地。テレビ局にしても多くの地域では福岡の放送が映るので、5局+1とむしろ充実しているくらいです。

それに佐賀は平地が多く、日頃の徒歩や自転車での暮らしが楽なんですよね。

というわけで佐賀は福岡のベッドタウン、補完地として県民も行政も省コストでやっていかれる絶妙感がある地です。

ちなみに上位にひしめく九州各県の目ぼしい利点はというと、こんな感じかな。

  1. 雪に悩まされることが少ない
  2. 食糧生産量が多い
  3. 人口もそこそこ多い
  4. アジアに近い

重要なのは2. でしょうかね。今後、ベテラン長距離トラックドライバーが続々とリタイヤしていくものの若い人の参入はないようだから遠くない将来に物流が細る日が来ます。そうなった際、九州は有利です。

また、3. の人口は九州と沖縄の8県を合わせれば約1430万人で東京に匹敵します。まあ、東京のように密集はしていないし、神奈川・千葉・埼玉に相当する近隣県もないけど、市場としてはそれなりの大きさです。

そんなわけで九州に若い世代の働き口がもっと増えればいいなと願ってやみません。

フランスではおにぎり一個900円

このGW、フランスに滞在していた辛坊治郎さんが「フランスで購入したおにぎりが一個900円くらいだった」とリポートしていました。

おにぎり+フランス国旗

まあ、日本風の米や具材も取り揃えれば値段が上がるのは当然だけど、仮に大きく円高ユーロ安に振れたところで1個450円とかにはならない(むしろ日本からの輸入物価は上がる)から為替の問題ではなく、日本の物価が相対的に安すぎるのでしょう。日本が「賃金も上がらないけど物価も安い」を長く続けてきたため賃金も物価も上がった諸外国から取り残されてしまったと。

では何が拙かったかといえば約20年前、小泉政権下での派遣法改正でしょう。派遣は当初こそ「会社に縛られない新しい生き方」と持て囃されたものの、いつしか「首切りしやすい割安な労働力」として定着し、今に至ります。一頃、外国人技能実習生への劣悪な待遇が問題になったけど、それを日本人相手にやっているのが派遣労働や非正規公務員なわけです。

コストカットは企業にとって本能のようなものとはいえ、それを国を挙げてやれば合成の誤謬が起こります。派遣社員は労働者の3%かそこらだとしても、非正規公務員と合わせて240万人超規模で市場としてはなかなかのボリューム。その大半が低賃金、低所得なら安い商品やサービスに頼らざるを得ないけど、それらには中間層や倹約志向な富裕層までもが飛びつくので、提供する側は人件費を切り詰めて価格を抑えせざるをえず、非正規に限らず中小企業の正社員の賃金も抑制されてしまいます。

また、経営者が「賃上げはしないから嫌なら辞めてくれていい。代わりに派遣社員を雇うから」と言える限り、大企業の正社員以外の賃金は上がりません。

ならば日本がやるべきは最低賃金の底上げでしょう。従来の最低賃金をパートタイムワーカー向けと位置付け、別途フルタイムワーカー向け最低賃金を設けて高めに設定すると。それにより派遣社員の活用が割安でなくなれば、企業は良人材の採用や引き止めに賃金を上げざるを得なくなります。できない企業は他社との合併もやむなしです。続ければ日本人が相対的に貧しくなっていくのだから。

それに低賃金労働問題の放置は将来の生活保護受給者を増やし、社会保障費負担として皆に跳ね返ってきます。非正規が多いとされる就職氷河期世代ももう50代前後。ぐずぐずしていられる暇はありません。

選択的夫婦別性について

教えてニュースライブ正義のミカタ

2月1日(土)放送の『教えて!NEWSライブ正義のミカタ』にて藤井聡氏が「選択的夫婦別姓は、強制的親子別姓制度だ」と息巻いておられました。なんとも苦しい理屈に聞こえます。私の意見は「親子別姓だと何が拙いの?」だから。

例外なく夫婦同姓であるべきと主張するなら以下の二つに正面から回答していただきたいものです。

  • 結婚を機に相手側の姓に変わった息子や娘は、もはや自分の家族ではなくなるのか?
  • 国際結婚や事実婚で夫婦別性の場合、父母と姓が違う子供は家族の一員ではないのか?

つまるところ選択的夫婦別姓が導入されても夫婦同姓が良いという価値観の人たち今までの慣習通り同姓を選べば良いだけのこと。別姓を選べるようになっても大多数の新たな夫婦は同姓を選びぶだろうし。

夫婦別性なら子供は父母どちらかとは別性になるけど、それは別性の決断とともに当事者が考えれば良い話であって、当事者が意に介さない問題に対して別姓反対派がわざわざ懸念して法改正を回避しようとするのはナンセンス。

「通称利用の拡大で事足りる」という意見もあるけど、通称なんて日本のローカルルールが外国では通用するわけがなかろうと。本名が変わるのだから選択的夫婦別姓とは似て非なる案です。

よって、もし通称を使うなら、旧姓を通称として試用するのではなく、配偶者側の姓を通称として名乗る方が合理的です。例えば父親が佐藤さんで母親が鈴木さんの間に生まれた佐藤くんにまつわる学校手続きの場合、本名が鈴木であっても通称の佐藤を使えるような。

また、「夫婦別性は戸籍制度を壊す策略だ」なんて陰謀論もあるけど、そんなアホな。むしろ事実婚の夫婦が婚姻届を出して法的にも一つの世帯を形成できるのだから、戸籍制度を強化するというもの。

結局、夫婦別性論者は心の繋がりや血縁よりも苗字の一致にオカルト的な価値を見出している変な人たちでしょう。

それでも高市早苗議員を筆頭に、本件で党議拘束がかかれば離党も厭わないと表明する国会議員もおられるけど、どうぞどうぞ。そうやって自民党が割れて政界再編ともなれば、政治がいくらかダイナミックに動くようになるので。

まあ、自民党内にも賛成派は多く、外堀は埋まっているので選択的夫婦別姓の導入は時間の問題でしょう。

小泉Jr.は雇用規制を強化したいらしい

自民党総裁選を争っている小泉進次郎議員が打ち出した解雇規制の緩和(後に解雇規制の見直しと訂正)に対して私はどうにもモヤモヤした思いを抱いていました。

でも、BSフジの9月20日(金)の番組で国民民主党の玉木雄一郎代表が私のモヤモヤの正体をうまく言い当ててくれました。「企業が社員を解雇しやすくする代わりに企業側にリスキリングや再就職支援を義務付けるのは、むしろ解雇規制の強化なのでは?」と。

そうですよね。リスキリングは会社の将来を支えてほしい社員のスキルアップを図るもので、辞めてもらう社員に会社がリスキリングのプログラムを行うのは変な話だろうと。

よってリスキリングを法的に義務付けても、せいぜい修了時に難しいテストを課して「及第レベルに達しなかったので辞めていただきます」という解雇の成立条件として使われるのがオチです。それって労使どちらにとってもいい話じゃないですよね。

まあ、再就職支援の方は解らなくもないか。勤務時間内に再就職活動ができるなら退職勧告を受けた社員にとってメリットはありましょう。でも、利用できる再就職支援サービスは会社側が選択したものに限られるはずで、ともすると選択肢が狭まります。

というわけで、総理大臣を見据えた政治家が打ち出す政策としては、企業におかしな付帯条件を付けて解雇規制を見直す前に、「ひとたび正社員の身分を失えば人生が途端に不利になる社会」という今の日本の風土を変えた方がいいです。

例えば以下。

リカレント・リスキリングに取り組んで、
その成果を生かして再就職することを条件に

失業保険の給付を手厚くする

これなら有望産業や人手不足の業種への再就職を促せます。

そうして離職が必ずしも不利にならず、転職が今よりもポジティブに受け止められる社会を目指すと。

その上でなら、金銭解雇などの解雇規制の緩和策も受け入れらやすくなるでしょう。

リスキリングを条件に解雇規制を緩和するって?

小泉四世こと小泉進次郎衆議院議員が自由民主党総裁選への出馬を正式に発表しました。

小泉進次郎衆議院議員

彼が打ち出した政策案の内、私が気になったのは「リスキリングを条件に解雇規制を緩和する」というもの。日本経済を活性化させるべく労働市場の流動性を高めたいのだろうけど、これ、悪手です。

まず、よく言われる「大企業では社員の解雇が難しいから雇用の流動性が高まらない」は幻想です。なぜならコストカット経営が根付いた日本では企業が正社員を解雇しても、次に正社員を雇うとは限らないので、解雇のしやすさでは雇用の流動性の向上は担保されません。

そればかりか解雇規制を緩和すれば、理論上、経営者が特定の社員に対して「割増退職金を受け取って辞めるか、それとも賃下げを呑むか?」と迫れるようになります。結果、転職市場で不利な中高年、あるいは住宅ローンや子供の教育費負担を抱えているなどでキャリアを途切れさせたくない社員がますます経営者の顔色を伺って働かざるを得なくなります。賃上げ交渉なんてもってのほかです。

解雇に際して企業には社員へのリスキリングを義務付けるにしても、取り組んだ社員がどういう成績や成果をいつまでに達成すれば解雇対象から外れるのかも曖昧です。というか、企業ではリスキリングに費用を割くにしても、辞めてほしい社員ではなくそれ以外の社員のスキルアップに投資したいはずだから、同一労働同一賃金の話と同様、経営者側の匙加減次第のリストラ手段として使われかねません。

中には「まともな企業ならそんなことはやらない」と言う声もあるかもしれないけど、経営難になった企業はなりふり構わないものです。企業全体が倒産危機に見舞われずとも、部門ごとの統廃合などは十分ありうるし、その都度人員調整は発生します。

そもそも解雇規制の緩和ってのは「希望退職を募れば他社でも通用する辞めてほしくない人まで辞めるから、名指しで首切りができるようにしてほしい」という経営者のエゴであり、有望な人に十分な処遇をせず、戦力外の人材にも適切な選択肢を示せなかった怠慢企業を利するものです。

それに、転職はそもそも労働者にとってのベネフィット追求の機会であるべきなのに、その決定権を企業側に与えるのは本末転倒な話。それよりも正社員の身分を失っても不利にならない社会を目指すのが正攻法。リスキリングとセットにすべきは失業保険の方でしょう。有望産業や人手不足が顕著な分野のリスキリングに取り組む人には失業保険の給付を手厚くするような。つまり、企業が社員を辞めさせやすくするのではなく、個々の社員が自発的に転職しやすくすると。

まあ、それだと会社側が辞めさせたい社員を選べず、辞めて欲しくない人材に去られる可能性もあるけど、そこは引き止められない企業側の責任です。

だいたい企業が用意するリスキリングメニューはその企業が展開する事業に関連するものに限られ、産業間の人材供給の最適化にはならないけど、失業保険とセットのリスキリングであれば、個々の労働者が自身の判断で科目を選べるし、国としても労働力を手厚くしたい産業への人材供給を強化できます。

よって、失業保険の拡充などで社員が会社を辞めても収入が極端に下がらない状況が作れたなら、解雇規制を緩和してもいいでしょう。でも順番を間違うと、労働者はますます保守的になって今の企業にしがみつくので、労働市場の流動性は一向に高まらないでしょう。

カマラ・ハリス対ドナルド・トランプ

カマラ・ハリス対ドナルド・トランプ
写真はFNNプライムオンラインより

2024年の米大統領戦、バイデン大統領が候補だった頃とは一転してカマラ・ハリス副大統領がいわゆる激戦州においてもドナルド・トランプ元大統領を世論調査でリードし始めました。

一部ではハリスが副大統領候補にペンシルベニア州のシャピロ知事を選ばなかったのが失敗だったと言う向きもあるけど、むしろ最重要激戦州での支持率が高いシャピロ氏には現職に留まって州内で側面支援をしてもらった方が効果的にも思えます。

また、高齢者候補どうしの争いを嫌うダブルヘイターは80代のバイデンが退いて60手前のハリスに変わったことで、ハリスに投票する可能性があります。トランプも歳の割には元気だけど4年前のバイデンよりも高齢だから、将来を託す相手としては相応しくないと判断されても仕方ないでしょう。一方のハリスは若見えするし。

そんな状況の中、トランプは例によってレッテル貼りによるハリス陣営攻撃に躍起になっているけど、そもそもネガティブキャンペーンに敵側の岩盤層を崩す効果はないばかりか、やればやるほど中間層、無党派層はうんざりして離れていくでしょう。

そんなわけでハリスは中間層、浮動票の受け皿になり得るけど、トランプは岩盤支持層以外の票の上積みが期待できないので厳しい戦いになるでしょう。浮動票も狙うなら副大統領にはバンスを選んでいないはずです。まあ、バイデンが相手なら浮動票は捨てても勝てると踏んだのだろうけど。

差し当たり9月10日に一回目が予定されているテレビ討論会次第だけど、ハリス陣営がよほどのヘマをしでかさない限り、11月もハリス勝利の線が濃厚だろうと。トランプ、暗殺未遂を生き延びた後に米国の半分ではなく全体の大統領候補になり損ねたのが致命的かな。

それにしても、日本のトランプ推し連中のなんと間抜けで滑稽なことか。ハリス推し、というか反トランプ派は「トランプの言動や資質が世界的に影響力が大きい米国大統領に相応しくない」と言うのに対し、トランプ推しは決まって嘘や罵詈雑言でハリス陣営を貶めようとするのですよね。マッタクモッテWeird。まるで反社組織のチンピラになったかのようだけど、そもそも日本在住で投票権もない人が日本でやったところで何の影響力もないというのに。

米国大統領選の行方

2024年11月の米国大統領選挙、暗殺未遂事件をドラマチックに生き延びたトランプ前大統領の圧勝かと思われたものの、ここに来てジョー・バイデン大統領が2期目への出馬を取りやめたことで状況が変わってきました。

ジョー・バイデン米国大統領

バイデンに代わる民主党の大統領候補はハリス副大統領。つい先日までの「失言王バイデンVS妄言王トランプ」「ボケ老人VSツッコミ老人」という構図が一転して、「元検事VS刑事被告人」に。ならば善人と目されるハリスで決まり、とはいかないのが米大統領選の面白いところです。

とは言えトランプ陣営は攻め手を慎重に選ぶ必要があるでしょう。女性蔑視や人種、民族などの属性で攻撃しようものなら浮動票が大きく動きかねないので。

事実、バンス副大統領候補のかつての「子供がいない女性が」という発言が物議をかもしていますよね。私は子供がいない女性ではないけど、猫好きの1人として聞き捨てならんです。まあ、猫好き男性はともかく、望んでも子供を持てなかった女性の投票行動には影響を及ぼすことでしょう。

しかも、トランプ(およびバンス)はあの性格なので向こう3ヶ月ちょっとの選挙戦で同様の不穏当な言動をしでかして自滅する可能性も小さくないと見ています。米国大統領選は結局のところいくつかの激戦州の浮動票が鍵を握るわけだし、不用意に蜂の巣をつついて痛い目に遭うと。

それにしてもトランプ推しの日本人って総じて間抜けで滑稽です。自身には選挙権もないのに応援者気取りで、相手方を嘲笑し、攻撃的になる傾向が見られます。親分に倣ったのか、考えが違う人を叩く快感を覚えてしまったのでしょう。

そこで思い当たるのは「久しぶりに帰省したら、実家の父親がYoutubeを見まくってて、すっかり発言がネトウヨ化していた」なんて話にそっくりだなと。

だいたいトランプはアメリカファーストなのだから、もし再選されれば、安倍晋三なき日本の負担は増やされて振り回されるのが目に見えいているのに。

ちなみに私のスタンスは「民主党側にも何ら思い入れはないけど、トランプは支持できない」です。それに、米国の大統領がどちらになろうとも日本は受け入れるしかないのだから、現時点で勝者を決めつけて肩入れするような発言は実にナンセンスだと思っています。

東京都の保育料第1子無償化は悪手

先日の東京都知事選、小池百合子知事が三選を果たしました。

2024年の東京都知事選挙。現職の小池氏が3回目の当選 石丸氏 蓮舫氏らを抑える

まあ私は都民ではないのでその結果をどうこういう気も無いのだけれど、当選したことで小池都知事が選挙公約に掲げた「第1子の保育料無償化」が隣接県に波紋を広げているようです。例えば千葉県の熊谷知事は「東京とそれ以外で福祉の格差はどんどん開く。われわれの努力で埋めることはできない」と言います。そりゃそうだよな。

そしてこの政策は東京にとって実は拙い悪手だとも思います。

気づいていない人も多いけど、東京の大きな課題の一つは高齢化がこれから急激に進むのに介護キャパが足りないことです。

今年中には団塊の世代全員が後期高齢者の仲間入りだし、団塊の世代を一番多く抱えているのが東京。当然ですね。東京には企業が集結しているのだから。

とはいえ地価が高く、適切な土地が残っていない東京では大規模介護施設を建てることもできません。

かつての役割を終えた多摩ニュータウンなんかを介護拠点に再開発できればいいけど、それとて区分所有者がいるため困難です。仮に適した土地建物を確保できたとしても、職の選択肢が多い東京では低賃金で重労働な介護人材の成り手が乏しいという問題がつきまといます。

つまり、東京は介護において他県、特に隣接の三県との連携が重要になってくるけど、「第1子の保育料無償化」で都外への転出を考えていた都民を引き止めれば、他県からそっぽを向かれても仕方ないでしょう。「東京都は、これからの消費活動を担う子育て世代は抱え込む一方で、もはや消費はしない要介護の高齢者を押し付けられても敵わん」とばかりに。

隣接県の介護施設が「都民の受け入れはお断り」なんて露骨なことはしないまでも、同県民の要介護者の受け入れを優先するので、結果的に東京都民は公的な介護機会にありつけないということは考えられます。そうして都内で介護離職者、介護待機者、そして介護放置される独居高齢者が激増すれば大きな社会問題化します。

そんなわけで福祉においては、東京都は潤沢な財源で独走するのではなく、隣接県と連携して物事を進めるべきです。

少子化対策として東京一極集中の是正が急務

厚生労働省が公表した2023年の人口動態統計で「東京の合計特殊出生率は0.99」と発表され、センセーションを巻き起こしました。

東京都の統計特殊出生率0.99

ただし、この数字は出産を当面考えていない独身女性が進学目的などで都外から多く流入するために実態以上に小さく出ているとも言われます。

とはいえ、東京の住居費負担が重いのは事実だから、裕福だったり、広めの家をすでに相続したとかでもなければ、なかなか子供を複数人設けるのは厳しいでしょう。

出産を機により広い住居を求めて隣接県に転出すれば東京都心の会社への通勤が長くなって時間的な余裕がなくなり、育児負担が片方(主に母親)に偏って、やはり第二子以降を持つのは厳しくなります。

そう考えると、少子化対策の一丁目一番地は東京一極集中の是正でしょう。現状の子育てに向かない東京に職の口が集結していて、子育てに向いた地方には仕事が少ないというミスマッチを解消してやると。

例えば、規模が大きい企業が営業拠点を東京に残して本社機能は思い思いの地方(東京郊外も含む)に移転しやすくする政策が必要です。

まあ、そうは言われても東京での生活が染みついた人などを中心に、東京一極集中の是正の有効性に疑問を持つ人も少なからずいることでしょう。これに対しては、政府なりメディアなりが以下のようなアンケートを取ればはっきりします。

対象:都内で幼い子供を育てているか、これから持とうとしている人達

Q1)経済面などで制約がなければ子供を何人持ちたいか?

Q2)仕事内容と収入が変わらなければ、東京と地方のどちらで子育てをしたいか?

もし、Q1が複数人でQ2が地方と答える人が多ければ、企業の地方移転(あるいはリモートワークの促進も)に少子化対策としての効果が見込めます。

そしてそれは首都直下地震や富士山噴火といった大災害へのリスクヘッジとしても有効です。