自民党総裁選の行方

自民党総裁選の顔ぶれ

17日(金)、自民党の総裁選が告示されます。どうやら岸田文雄氏、高市早苗氏、河野太郎氏の三つ巴(名前は立候補表明順)になりそうな気配です。

飛び抜けた候補はいないとされているものの、私は河野太郎氏がある戦術を執れば総裁選で圧勝し、かつ自民党のほぼ全体を掌握して長期政権の礎を築けるかもしれないと見ています。

その戦術とは「世襲の禁止」です。「自分が総裁になったら、これから新たに自民党公認で国政選挙に挑む候補者には、親族と同じ選挙区での立候補を禁止する」という公約を掲げます。何しろ河野氏は三世議員ながら父河野洋平氏の選挙区(神奈川15区)を引き継ぐのではなく、お隣の神奈川17区で勝って議員になったのでそれを言う資格があります。ちなみに岸田氏は旧広島一区(現在の広島一区を含む)の世襲議員です。

なお、自民党では伊吹文明氏、竹下亘氏、川崎二郎氏、塩崎恭久氏などが引退を表明しており、川崎市と塩崎氏は長男を後継者に据えるらしいけど、彼らには親とは違う選挙区で戦ってもらいましょう。なんなら互いの選挙区入れ替えるのもいいでしょう。

もちろん世襲禁止案をぶち上げれば自民党内に激震が走ります。特に自身の引退を控えた重鎮議員たちから猛反対の声が上がるだろうけど、それこそが狙い目。改革色が際立つので。かつて小泉純一郎氏が自民党内に抵抗勢力を作り出したあの手法です。

そして総裁選では「国会議員職がまるで家業になっている」「新陳代謝が起きない」「優秀な人が政治家を目指さなくなる」「資産を非課税で相続できるのはおかしい」などと世襲の弊害を説いて世論を味方につけます。今回の総裁選はフルスペックなので地方票をあらかた獲れば勝ちです。

しかも自身が首相になった際に党重鎮たちの厄介な介入も取り除けます。彼らとて自身の地盤・看板を引き継がせることができなければ、子息などが議員を志す場合には党のサポート具合が重要になってくるわけだから。

日本の驚異的な「安さ」は 働く人の我慢と犠牲が支えている

先日、ニューヨーク在住の大江千里氏が「日本の驚異的な「安さ」は働く人の我慢と犠牲が支えている」と発言し、話題になりました。

大江千里氏が「ラーメン1杯2200円」の米国から語る、安い日本の深刻問題

一部引用するとこの通り。

日本には500円で買える「ワンコインランチ」という言葉がありますが、ニューヨークだと5ドルじゃサンドイッチ一つだって買えません。大人気のラーメンだったら1杯20ドル(約2200円)以上。替え玉やトッピングをして、ビールも飲むと50ドル(約5500円)です。

日本で働く人は、企業に利用されちゃっている面がありませんか。本当ならもっとお給料をもらうべき仕事でも、文句を言わず我慢して、手も抜かずに働くでしょう?そこにある種の美しさはあるのですが、結果として経営者に安く使われている労働者が多いのでは。安い日本というのは、こういう我慢している人たちの犠牲の上に成り立っているのだと思います。

同意します。いや、それでも国が発展していかれるなら必要な犠牲と言えなくもないけど、現実はシビア。日本経済はじわじわと弱ってきています。無理もない、低所得労働者もまた消費者なわけだから。

終わりの始まり

では、なぜそうなったかというと、大きな理由の一つは「派遣の使い勝手が良すぎること」でしょう。2004年の派遣法改正でフルタイムワーカーをアルバイトのような条件で使い捨てできるようになったため多くの企業が飛びつき、合成の誤謬で「ワーキングプア増産システム」として機能してきました。

また、派遣依存は正社員にも影を落とします。派遣社員の増加、冷遇ぶりを目の当たりにした正社員は会社にしがみつき、会社は賃金を上げずとも社員を留めおけてしまうので。

しかも企業側が正規採用を絞るほど派遣への需要が高まります。そして経済的な余力がない人は選択の余地もなく、低賃金労働にも人材が供給されます。

「派遣社員の割合は全労働者の2.5%、40人に一人。ひとクラスに一人いるかいないか」なんて説もあるけどこれはミスリード。世の中には飲食や販売のように、そもそも派遣を必要としない業種、業態も多いので、それらを母数から除くと派遣の割合はぐっと上がります。ひとクラスに何人もいる換算です。

その結局、デフレがすっかりエンドレス化し、稼げない経営者や労働分配に消極的な企業、そして派遣会社以外、誰も得しない社会構造が出来上がってしまいました。言うなれば「アンチSDGs」です。持続不可能になってしまっていると。

巻き戻せ

とはいえ「期間限定で労働力を増員したい」「期間限定で働きたい」という労使双方のニーズは真っ当なので、派遣労働というシステムはそのままで単純に待遇を上げるといいでしょう。

具体的には以下のような政策が良いと思います。

  • 最低賃金をパートタイムワーカー向けとフルタイムワーカー向けの二段構えにする
  • フルタイムワーカーの最賃がパートの2倍未満は違法とする
    (この最賃は会社が派遣会社に払う額ではなく、派遣会社が派遣社員に払う額)
  • 交通費込み時給の求人は禁止

パートの最賃が時給1,000円の都市なら派遣の時給は2,000円以上。年収でいくと400万円近くにはなるのでワーキングプア脱却です。

派遣でもその水準の額が得られるならダメな会社にしがみつく必要がなくなり労働市場の流動化が高まって正社員の賃金も上がっていきます。そうしないと会社は有能な人材を引き止められなくなるので。

もちろん企業側の負担は増えるし、稼げない経営者は窮地に陥るかもしれないけど、本来あるべき姿に戻るだけです。いつまでもタコが自分の足を喰らうような、誰かの犠牲の上に成り立ったコストカット経営が許されるべきではありません。

ワクチン接種予約サイトはこうあるべき

私は未だにワクチン接種を予約できません。職域接種のないフリーランサーの辛いところです。

現状の予約サイトは、接種可能な会場やクリニックを探し、カレンダーから接種日を選んで予約を入れさせる仕様だけど、いつ見ても「予約できる接種会場はありません」だし、たまに接種場所が見つかってもことごとく「× 空きなし」なのですよね。15分ごとに更新されているらしいけど、よっぽど暇で根気強い人じゃないと予約できないでしょう。

そこでもし私がシステムを設計するなら以下のような仕様と運用にします。

サイトの画面はこんな感じです。

ワクチン接種予約サイト案
予約サイトでは希望条件を登録してもらうだけです。

そして運用ルールはこう。

  • ユーザに希望の接種場所、曜日を登録してもらう
  • ユーザの希望と接種場所の空き状況を運営側でマッチングして決定。ユーザに通達する
  • 割り当てをキャンセルしたユーザは順番待ちの最後に回し、他の人を繰り上げる

ある程度ユーザの希望を聞きつつも接種場所と日時は運営側で決定するところがミソです。当然、条件をゆるく設定した人ほど決まりやすくなります。

これでいいと思うのですよね。ワクチン接種が理由なら会社や学校を休めるだろうし、忙しくて頻繁に空き状況を確認できない人も一度条件を登録しておけばいつかは自動的に接種予定が決まります。

自民党大敗の予感

朝まで生テレビ Since 1987

8月28日(土)放送の『朝まで生テレビ 激論!コロナ禍と政治の責任』を録画で見ました。いやぁ、これが初めてかも。共産党と部分的でも意見が合ったのは。

番組中、日本共産党政策副委員長の山添拓議員が訴えていたのは「野戦病院、臨時医療施設を急いで開設しろ」です。真っ当ですよね。自宅療養感染者は今や全国で12万人超。中には本来なら入院が妥当な人も大勢いるはずだから。訪問診療だと移動時間もかかるので効率が悪く、診られる人数が限られてしまうと。まったくもってその通り。

対して自民党総務会長代理の片山さつき議員は「都内7,000の診療所それぞれが5人のコロナ患者を診れば35,000人の自宅療養者をWatchできる」だと。まるで診療所が嫌がってコロナ患者を避けているかのような言いっぷりです。現実は、ほぼ全てが協力しようにも設備や人員の都合で難しいのが実情だろうに。よってこのまま自宅療養中の死亡例が増えれば、来る総選挙では自民党が大敗することでしょう。

なお、三浦瑠麗さんは訪問診療と臨時医療施設の双方に理解を示しつつも別の角度から懸念を訴えてました。「仕切りはなく、男女の区別もなく、トイレも遠くてお風呂もない状況が何日も続くことに日本人が耐えられるだろうか?」と。確かに、災害の時の避難とは違うからな。とは言え自宅でいつ病状が急変するともわからず、そうなっても入院できない底知れぬ不安感を抱き続けるよりはマシだと思いますよ。特に単身者などにとっては。

ちなみに大阪は1000小規模の臨時医療施設を作るとのこと。さすが決断が早いです。具体的なところは調整中らしいけど、願わくば防音性の高い個室っぽい仮説病床が設置されることを願います。トイレはないだろうけど。

また、今朝放送のサンデー・ジャポンでは、田村厚労相と小池都知事が共同で都内の全病院にコロナ患者の受け入れを要請し、従わない病院名は公表すると発表したことに対して、長谷川ミラさんが「飲食店に続き、病院も脅すのか」と憤っていたような。こちらは都の意向も大きいとはいえ、やはり自民党に有利には働かないでしょう。

選挙展望2021年秋

選挙の投票行為

自民党総裁選が9月29日(水)の投開票と決まりました。まあ、菅総理の再選は揺るがないでしょう。二階幹事長や安倍前総理が支持を表明しているのだから。

よって気になるのはその後の総選挙の行方。私は自民党が50議席以上を失うと予想します。それどころか場合によっては70議席減、自公で過半数割れもあり得るだろうと。結果、菅総理は国民から「有事のトップリーダーとしては不適任」という烙印を押されたとして、総裁再任後早々にハラキリ辞任することになるでしょう。石破茂氏が今回の総裁選出馬を見送る理由も、そういうことなんじゃないかな。

何しろ支持率が低下するばかりの菅政権のコロナ対策はワクチン接種頼み。でも、菅政権がこの1年でやってこなければならなかったのは「最悪の事態を想定した医療体制の整備」です。それをやらなかった政治的ネグレクトの結果、感染して症状が出ていても入院できず何時間も待機させられたり、自宅で亡くなるケースが相次いでいます。コロナに感染した妊婦が自宅療養を強いられ、早産で子供を失った件は失政の最たる犠牲です。

この国の医療・保健が逼迫しやすいことは昨年にも経験済み。加えてウイルスは変異しやすくデルタ株のような厄介な変異種が登場しかねないこと、ワクチンを接種しても感染を完璧には防げないであろうこと、ワクチンの接種効果がいつまで続くかが不明確なことなどは、前々から言われていました。

他方で、感染の初期から医療処置が受けられれば、高齢者や基礎疾患がある人以外、死亡率が高い感染症ではないことも解っていたのだから、少数の医療従事者で多くの患者を診られるようにする医療体制の整備や法改正はやって然るべきだった政治課題です。時間も十分にありました。

なのに菅政権はワクチン接種さえ進めば万事が好転するかのように勘違いして致命的な戦略ミスを犯し、国会も閉じたまま、11万人超の感染者に自宅療養を強いて、死ななくてもいい人を死なせるかもしれない状況を続けています。

また、ワクチン接種で先行したイスラエルや米国でも感染が再拡大しているし、ワクチン接種の抗体数は3〜6ヶ月で減退するという報告もあります。だとすると、打ちたくても打てていない65歳未満の接種待ちの人たちを後回しにして、医療従事者の3回目摂取を急ぐ必要が出てくるかもしれません。総選挙は10月か11月。それまでにはワクチン接種率も上がっているとの目論見も崩れかねないわけです。

よって総選挙では決して野党が強いわけではないのに菅政権の致命的な失政から自民惨敗、菅総理引責辞任というのが現時点の私の予想になります。

菅氏、何だったらステップダウンして、また官房長官職に収まるのがいいのではないでしょうか。