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これから起こるかもしれないこと
イラン情勢の緊迫が続いています。とりわけ懸念されるのは、エネルギー供給の不安定化です。これが深刻化した場合、公共交通機関やオフィスの稼働縮小を余儀なくされ、コロナ禍のように在宅勤務が再び求められる可能性もあります。
もちろん、そのような事態が起きないことが望まれますが、緊急時を想定した備えをしておくことは重要です。
本稿では、そうした状況を見据え、印刷物の版下PDFおよび配布用PDFの制作体制について考えます。
必要な制作体制
在宅勤務において印刷物の版下PDFおよび配布用PDFを制作するためには、以下の環境が必要です。
- 作業スペース(仕事部屋、デスク・チェア)
- インターネット環境
- PCおよび大型モニター(24インチ以上、フルHD以上を推奨)
- DTPアプリ一式(DTPオペレーターの場合)
- Acrobat(可能であればAcrobat Pro)
- PDF比較ツール(新旧比較用)
- データ共有サービス
また、制作者間のコミュニケーション手段として、Web会議ツールやチャットツールも必要になりますが、これらは比較的容易に導入可能です。
在宅制作の懸念
時期
在宅制作がいつ必要になるかは予測できません。政府説明では、日本には約250日分の原油備蓄があったそうですが、すでに放出も始まっています。ホルムズ海峡の事実上の封鎖が長期化すれば、オフィス活動の縮小や通勤自粛が国・自治体から急に要請される可能性もあります。
備蓄の残りが少なくなり、かつ新規調達の見通しが不安と判断されたら、何らかのエネルギー抑制策が導入されるかもしれません。
実際にそのような事態に至るかは不透明ですが、あらかじめ対策を検討しておくことが重要です。
トリアージ
エネルギー危機が現実味を帯びてくると、単なる節約ではなく、社会機能ごとに優先順位を付ける「エネルギー配分のトリアージ」が不可避になります。優先度の高い分野を維持し、それ以外は段階的に抑制されることになるでしょう。
最優先となるのは、物流と基幹インフラです。人々の生活は物資の供給なしには成り立たず、医療、水道・下水、発電・送電、通信といった社会基盤も継続的に機能させる必要があります。
一方で鉄道は、生活物資を運ぶトラック輸送と比べれば優先度が下がると考えられます。ただし、これらの基盤を支える人々の移動手段として一定の運行は維持されるでしょう。そのため、在宅勤務が可能な業種については通勤の自粛が求められ、限られた輸送力をエッセンシャルワーカーに振り向ける対応が現実的となります。
差し当たり、印刷物の版下PDFや配布用PDFの制作業務は、通勤を伴わない在宅業務へと移行せざるを得ない側に位置付けられると考えられます。事前に在宅制作体制を整えておく意義はここにあります。
難易度
通勤自粛が段階的に進められたとして、「週に1〜2日は在宅勤務」と求められても、多くの制作者は会社のデスクトップPCと大型モニターを前提に作業しているため、同等の環境へ即座に移行するのは容易ではありません。
一般的なオフィスワークであればラップトップPCだけで対応可能かもしれませんが、PDF制作では画面サイズが生産性や精度に大きく影響します。
自宅に制作環境が整っていない場合、会社がPCやモニターを貸与する必要が生じる可能性があります。
期間
通勤自粛がどの程度続くかは見通しが立ちません。
鉄道は主に電力や軽油に依存しており、その多くは原油輸入に支えられています。仮に情勢が落ち着いたとしても、原油を積んだタンカーが中東から日本に到着するまでにはおよそ3週間を要します。そのため、影響は一定期間継続することが想定されます。
結果として、エネルギー供給が安定するまでの間は在宅制作を継続せざるを得ない可能性があります。
したがって、平時のうちに段階的な在宅制作への移行計画を整備しておくことが望まれます。
校正紙をどうするか
普段の制作で校正紙を活用している制作者は多いと思われますが、在宅制作ではその運用を見直さざるを得ないかもしれません。
オフィスであれば複合機によるプリントアウトは容易ですが、在宅環境では同様にはいきません。プリンターの設置スペースやランニングコストの負担も無視できない要素です。
さらに、手書きした校正結果を他の制作者と共有するためにはスキャナーが必要となり、校正紙の保管や廃棄にも手間がかかります。
こうした状況を踏まえると、在宅制作においては校正紙への依存を可能な限り減らし、PDFベースで完結させる運用が現実的と言えるでしょう。
PDF新旧比較アプリは?
制作物の品質を担保するうえで、修正前と後のPDFの比較は欠かせない工程です。
在宅環境では同僚にダブルチェックを依頼することが難しくなるため、PDF比較アプリの活用がより重要になります。
ただし、会社で導入しているPDF比較アプリがUSBドングルによるライセンス管理を採用している場合、持ち帰って利用できるのは1人に限られます。その場合、誰を優先すべきでしょうか。重要案件を担当するベテラン編集者か、それともミスを防ぐ必要性の高い経験の浅いスタッフか。判断は容易ではありません。
PDF比較環境が十分に確保できないまま在宅制作を行うと、差分確認や校正作業の効率・精度が低下するおそれがあります。
こうした制約を踏まえると、在宅環境でも各制作者が独立して利用できるPDF比較手段を用意しておくことが重要です。
XOR for Mac/Windowsは、その条件を満たすソリューションです。月額2,000円(初月無料)のサブスクリプションで提供されており、在宅期間のみの利用も可能です。同じApple ID/Microsoftアカウントであれば自宅でもオフィスでもXORを使えます。
操作はシンプルで直感的なため、特別な習熟を必要とせず導入できます。
さらに、XORは差分の検出にとどまらず、その場で校正結果を記入し、再修正指示用のDTP原稿作成まで一貫して行えます。これにより、在宅制作においても品質担保と作業効率の両立が可能になります。


