ユーザビリティの威力

私が以前とある申請審査業務に関わった際のエピソードを。

その業務は、企業や個人から申請された内容を審査マニュアルに沿って審査し、不備がなければ承認(より上位の審査に回す)、不備があれば申請者に不備内容をお知らせするというものでした。

運営体制は以下。

  • OP(オペレーター):審査担当
  • SV(スーパーバイザー):進行管理兼審査サポート
  • FW(フロアウォーカー):審査要件やシステム設計に関する相談役

大勢いるOPが並行して審査、不明点があればOPはSVに相談し、SVでも迷う場合はFWに判断を仰ぎ、FWでも判断がつかない法解釈などの懸案は外部の専門家に伺いを立てるという運用がなされていました。推測するに、どの申請審査業務も似た感じかと思います。

オペレータたち
同じ条件で集まったオペレータ達であっても個人差があるのだから…

ただし、いざ業務が始まってみるとOPがSVをひっきりなしに呼ぶことになりました。引き当てた申請の内容と審査マニュアルを突き合わせても可否の判断がつかないケースが多発したからです。SVは数人で何十人ものOPを担当するため、個々のSVにはかなりの負荷がかかっていました。

その様子を客観的に見て私が思ったのは「どうにも初動に失敗しているな」です。具体的にはプロジェクトの初期に以下のメンバーも加入させるべきだったと。

  • UXデザイナ
  • テクニカルライター

まず、企業や個人から内容が微妙な申請がなされることが多いのは、申請手引き書の記載や申請受付けWebサイトに起因するところが多かったはずです。申請者はITに慣れた人ばかりではないし、文章読解力もまちまちなのだから、できるだけ迷う要因を減らしてやらないと。

同様に、OPが参照する審査マニュアルも、できるだけ別解釈の余地がなく容易に把握できる内容にすべきです。例えば主語を明確にするだけでも読み手の印象はずいぶん変わります。そして、マニュアルは順次アップデートすると。口頭での周知ではなかなか定着しないし、オペレータ間の個人差も出てしまうので。

そうして、申請システムがユーザフレンドリーではなかったがために申請者を余計に迷わせ、審査マニュアルが平易ではなかったためにOPとSV、そしてFWの負荷が膨れ上がってしまっていました。

逆に言うと、有能なUXデザイナがシステム設計から参加し、同じく有能なテクニカルライターがすべての説明文を監修していれば、エンドユーザー(申請者)もOPも迷うことが少ないため、全体の工数やミスが無駄に膨らむことを防げたはずです。

折しも今は新型コロナ禍の正念場。関連の各種補助金・給付金制度は続いていたり、また新規に始まるかもしれないし、ワクチン接種の受付けや、その他の目的で公的なシステムがこれから作られるかもしれないので、できるだけうまくやってほしいものです。ITコンサル企業がUXデザイナやテクニカルライターを抱えるのもいいだろうし、フリーランスの人材を活用する手もあります。

どこも余計に変えてない証明に

XOR Version 1.5(Mac版)では透かし表示状態のPDFを書き出せるようになりました。

実はこの「透かし表示の書き出し」はこれまでで最もリクエストが多かった機能です。どうやら某大手印刷会社系列の制作では、校正提出の際に「修正を依頼した箇所以外はどこも変えていない」を証明する資料の添付が求められるらしいので。

もちろん制作では無用な変更は行わないのが鉄則だけど、DTPではちょっとした修正であっても周りの要素を移動したり並べ直すことも多く、意図しない不具合が紛れ込みがちです。そして意図していないために発見もされにくく、それが時には刷り直しなどの大ごとにも発展しかねません。

よって「どこも変わっていない」の証明は非常に重要です。これまで各制作者がどのような手段で応えていたのかは伺っていないものの、なるほどXORの透かし表示をPDF出力できれば簡単だし、それで事足りてしまうわけですね。XORの新機能としてリクエストしてくださったのもごもっともです。

本当はもっと早く実現したかったのだけど、懇意の開発者のスケジュールが開かず、この時期のリリースとなってしまいました。何事も理想通りとはいかないものです。

XOR for Mac Version 1.5をリリースしました

XOR for Mac Version 1.5をリリースしました。

新機能は「透かし表示の書き出し」。クライアントへの校正提出の際に「修正を依頼された箇所以外どこも変更していない」という証明に最適です。

使い方も簡単。わずかな操作で提出用PDFが書き出されます。

詳しくは下記の動画でご確認ください。

竹中平蔵氏が行った労働規制緩和は正しかった?

2021年3月21日(日)放送の『そこまで言って委員会NP』は竹中平蔵氏の特集。最初のコーナーのテーマは「竹中平蔵氏が行った労働規制緩和は正しかった?」でした。

竹中平蔵氏が行った労働規制緩和は正しかった?

2004年から製造業への派遣労働が解禁され、非正規雇用が増加し、時には派遣切りがなされ、法人・富裕層への減税により貧富の格差が拡大したという前提です。

これらに対するパネリストの意見は賛成反対両方に割れていたけど、まあどちらの言い分にも理があります。でも、一つ絶対的に正しいと思ったのが八代弁護士のこちらの見解。

「非正規」とは、まるで正しいものに辿り着けなかった人の呼称。そして、正規社員の存在が労働市場の流動化を妨げ、国際市場での競争力の低下を招いた

まったくもってその通り。こんなことを続けていたら日本はひたすら没落していくばかりです。何しろ非正規労働者がワーキングプアになりがちなだけでなく、正規社員も賃金が上がらないので、デフレはエンドレス化し、少子化もいっそう進んでしまいます。

ならばどうあるべきかまでは番組では語られていなかったけど、私は単順に非正規の待遇を上げる法改正をするべきだと思います。

具体的な案は以下。

  • 派遣・契約社員の最低賃金はパート・アルバイトの2倍以上
  • 賃金に交通費を含んではならない

まず、フルタイムで働く派遣・契約社員の処遇は時間限定労働のパート・アルバイトとは位置付けを変えます。そしてパート・アルバイトの最賃が1,000円の都市だと派遣・契約の時給は2,000円以上。年収384万円(8時間x20日x12ヶ月x2,000円)ならまあまあの水準だと思います。派遣の立場になってもその額が得られるなら、嫌な会社にしがみつく必要もなくなり、労働市場の流動化も生まれます。

竹中氏はかつて「もはや首を切れない人は雇えない」と言って炎上したけど、「首を切れる代わりに労働対価は相応に高額」であれば妥当です。

派遣社員に依存した企業は大変かもしれないけど、コスト増は商品やサービスに正しく転嫁するのが当然だし、派遣、契約、そして正規社員の所得や消費余力が上がってデフレの巻き戻しが始まるのだから、それで淘汰されるなら仕方ありません。

macOS Big Surがいつの間にか治った

私のMacBook Air(2018)はmacOS Big Sur 11.2.2のアップデータを適用して以来、動作がおかしくなりました。スリープから回復する際に毎回再起動がかかるという。

そんなわけで先週macOS Big Sur 11.2.3が出た際にはすぐさまアップデート。

macOS Big Sur 11.2.3アップデータ

でも症状が治らずがっかりしていたのだけど、数日使っていたら、スリープからちゃんと回復するようになりました。不思議だ。アップデータの浸透までに数日かかる?そんなアホな。

まあ、一安心だけど、頃合いをみてApple Storeに診断を頼むべきでしょうね。実は電源OFF状態からどのキーを押しても起動できるし。

Apple、修理の際に代替機の貸し出しがあれば気兼ねなくマシンを預けられるのだけど、そのサービスはないんだよな…。