凶弾と教団

先の参議院選の直前に安倍元総理が凶弾に倒され、犯人が旧統一教会信者の2世だったことで、以後、教団と政治、とりわけ自由民主党の国会議員とのつながりが取り沙汰されるようになりました。

気になるのはその後の自民党の煮え切らない姿勢。教団が暗殺を企てたわけではないにせよ、教団がらみで安倍元総理という歴史上も稀有な存在を失ったのだから、さぞ強硬な態度に出るかと思いきや、どうにも教団に配慮したかのような発言が続いています。

それだと国民受けがすこぶる悪いことぐらい党の面々は承知なはず。おそらく国民の多くが「この際、教団とはキッパリ手を切り、旧統一教会に限らずトラブルの多い宗教団体からは無条件に宗教法人格の剥奪となるよう法整備する」という展開を望んでいるし、そうしなければ岸田政権、並びに自民党の支持率はひたすら下がっていくことでしょう。

だとすると、やらないのではなく、できないのではないかと。教団からの逆襲が恐ろしくて。

例えば、かの教団から宗教法人格の剥奪となれば、もはや日本での活動が難しくなるので教団側は最後っ屁とばかりに自民党との過去のつながりを洗いざらい公表するかもしれません。結果、党がひた隠しにしたい新しい情報があれこれ出て、党の個々の国会議員が否定した内容とも矛盾し極めて拙い状況に追い込まれるのが分かりきっているとか。

だったらこのまま黒に近いグレーな状況を続けて批判を受けてでも、しらを切りとおす腹だと。

参院選に勝って黄金の三年間に突入した岸田政権ですが、下手すると自由民主党の存亡にも関わる重大局面に差し掛かっているのかもしれません。

晒しの刑

鳩

東京都大田区が今春、駅前や公園での餌やりを禁止する条例を施行したとのこと。同様の条例は全国あちこちにあるようです。目的はもちろん鳥害の削減。当然でしょう。鳥類、とりわけ人に接近する鳩やカラスの糞は始末に悪いし、おこぼれを狙うネズミとかが増えるのも問題なので。

ただし、条例施行により悪質な事例に対処する根拠ができたのは一歩前進だけど、課題はそうそう取り締まれない点。管轄の自治体も監視員を巡回させられないわけだから。しかも迷惑行為の相手がイカつい人なら周りは注意もできなかったり、逆ギレした者勝ちにもなりかねません。

同様の話は歩きタバコ、路上喫煙なんかにも言えます。連中もそれらが傍迷惑で喫煙者バッシングをさらに強める行為だってことぐらい分かっているだろうけど、やめられないのは中毒ゆえなのでしょう。禁断症状が理性よりも優先するようで。

迷惑喫煙が腹立たしいのは、当人が立ち去った後も目に見えない有害物質が中空で止まり続けること。あの嫌な悪臭に晒された時には注意する相手は既にいないと。

他にも、河川敷でのゴルフ練習やら漁業権の侵害なんかもそう。牡蠣やアサリの密猟ですね。そうやって誰かの欲望のために他者が不利益を被るなんてことが黙認され続けていいわけがなく、効果的な対処が必要です。

私が考えるに「写真や動画を晒す」のがいいと思います。見つけた人が誰でもいいから写真や動画を撮って管轄の自治体に送信。それが迷惑行為に該当すると認定されたら掲示板やWebページで公開します。ちょっとした指名手配のようなものです。そして本人が名乗り出て罰金を払うなり、始末書を書くまで晒し続けると。

結果、晒された人への世間の風は冷たくなるでしょう。たとえば会社のビルが禁煙化されたからと近所の屋外駐車場(当然、喫煙所としての利用は許可されていない)で喫煙している姿が晒されれば、社内で問題化し兼ねないので抑止力として働くだろうと。

安倍晋三元総理大臣死去

安倍晋三元総理大臣が凶弾に倒れ、帰らぬ人となりました。ご冥福をお祈りいたします。

安倍晋三元総理大臣

私は安倍総理の不寛容な国会運営などが好きではなかったし、通算8年8カ月の在任期間にしても野党が弱すぎるタイミングでの就任だったことが手伝ったわけだけど、それでも安倍氏は稀有な政治家だったと思います。何しろあのドナルド・トランプ大統領と友好関係を築き、難しい4年間を無難に乗り切ってみせたのだから。

日本では25年間もデフレが続いていて、その責任を安倍氏に求める向きもあるけど、その原因はアベノミクスの失敗ではなくコイズミクスの負の遺産でした。派遣法改正によって派遣社員がワーキングプアになるだけでなく、正社員の賃上げも無くなってしまったのだから。よって安倍内閣に非があったとすれば先人の間違った決定事項を正せなかったことでしょう。

さて、明日は参院選の投開票日。この事件は皆の投票行動にはさほど影響を及ぼさないと見ているけど、問題はその後。安倍氏は自民党の保守勢力を束ねる元締め的な存在だったのに、彼が突然いなくなったことでそれらが分裂し、迷走し始めるのではないかと。

世界中が難しい局面において、この許し難い暴挙、惨劇が日本を不安定にさせ、貶めることがなきよう、切に願います。

邪馬台国はどこにあった?

吉野ヶ里遺跡

邪馬台国がどこにあったのかは未だ解決を見ない歴史上の大きな謎。たびたび新説や珍説が発表されメディアを賑わわせます。つい先日もYahoo!ニュースで新しい解釈が取り上げられていました。

さて、候補地として代表的なのは九州と畿内。私は断然九州説支持です。単純に大陸に近いから。

だいたい邪馬台国については魏志倭人伝に書かれているだけで、その僅かな手がかりをもとに皆ああだこうだと言っているけど、それってどうなんだか。例えば、「投馬国まで南に水行二十日」「邪馬台国まで南に水行十日、陸行一月」という記述から、やれ方角が間違っているだの、距離の尺度が違うだのと。でも、そんな大雑把な方角や数字を確定事項として扱うことに無理があるだろうと。

そこで私の説は「魏の使節団が旅費や報酬を釣り上げるために旅の工程を盛った」です。対海国(対島)、一大国(壱岐)、末廬国(松浦)、伊都国(糸島)ってところまでは足跡が辿れるのに、その先が曖昧になっているのは、玄界灘に面した沿岸の様子は当時の大陸にも伝わっていて誤魔化せないけど、内陸に至れば誰ももう確かめられないから10倍ぐらい盛って報告したと。

というわけで邪馬台国は九州の北部のどこかだったと思います。ただし、記録が当てにならない以上、よほどの物証が発見されない限り、それも証明されないだろうと。

先貧論

かつて中国の鄧小平は「先に豊かになれる者たちを富ませ、落伍した者たちを助ける」という「先富論」を唱えたけど、今の日本はさながら「先貧論」とでも言うべき社会です。「運が悪い者から先に貧しくなれ。いずれ周りも続くから、自分だけが不遇じゃない」と言わんばかりの。

鄧小平
鄧小平像

日本では30年間もろくに賃金が上がっていないけど、理由は「安くないと買わない。売れないから安くする」というネガティブサイクルが根付いてしまったから。そして、それを支えているのが「派遣社員の使い勝手の良さ」です。間違いなく。

なにしろ企業は正社員を派遣社員に置き換えれば頭数を保ったまま人件費を下げられ、差額を収支の穴埋め、内部留保、そして値下げの原資に充てて安値競争に挑めるのだから。値引きは安易だけど強力なので「うちは品質で勝負します」が成立しません。

そんな中、正社員が収入アップを目指そうにも同業他社が中途採用より派遣の活用を望むなら転職なんて不可能。昇給がなかろうが賞与が減らされようが現職にしがみつかざるを得ません。住宅ローンや子供の教育費負担があればなおさらです。そして社員が辞めないなら会社側は賃上げする必要がありません。

「派遣の割合なんて労働者の2.5%だ」という人もいるけど、その2.5%の不遇ぶりがまるで見せしめのように機能して、60%に及ぶ正社員の多くの賃金も上がらなくなりました。

そればかりか長年企業でキャリアを積んだものの病気や親の介護などで会社を辞めた人がいざ再就職しようにも、正社員の門戸が閉ざされていれば派遣に甘んじるしかありません。つまり、企業側が横並びで正社員採用を控えるなら、スキルや経験値を持ったベテラン人材をもアルバイトのような条件で不当に安く雇えてしまうわけです。なんと理不尽な。

この構図に早急にメスを入れないとデフレや少子化もますます深まり、円安と輸入物価高も進んで日本はひたすら貧しくなるでしょうね。日本経済が力強さを取り戻さない限り低金利を続けざるを得ないのだから。

よって、ここは政治が動いて「派遣は雇用の調整弁にも使われる代わりに賃金は割高」とすべきです。フルタイムワーカー向けの最低賃金制度(派遣会社が派遣社員に支払う額の下限。派遣を依頼する企業が派遣会社に支払う額ではなく)を作って高めに設定するなりして。それは派遣の当事者の購買力を上げるだけでなく、正社員の賃金上昇の足枷を外すために。

だいたい東証プライム市場に派遣会社が 30社も名を連ねていることが異常だと思います。人材派遣は日本の有力産業なのでしょうか?

ちなみに日本の派遣会社の数は2年前の時点で米国(人口が日本の約3倍)の4倍だそうな。今の日本はいっそう貧しくなるために国を挙げて懸命に頑張っているようなもの。まさしく先貧論の社会です。