顧客サービスにもXORを

私が昨年春まで勤めていた都内のドキュメント制作会社の部署では、あるクライアントの取説を改版する際にAcrobatを使ってPDF上の変更箇所をコメント機能の四角形で囲んで提出していました。

これってそこそこ面倒な作業だし、それなりに人件費もかかっていたものの制作費としては請求できず、顧客サービスの一環で始めたものが慣習化してやめるにやめられなくなったそうで。

でも、一通り修正が完了したことを確かめてから、コメントの四角形を付けるのは二度手間ですよね。

さしあたXORを使えば、この工程は付加的な作業ではなく通常の確認作業の作業として済ませられます。

XORの導入後は、変更箇所に一通り四角形をつけてから確認作業に入るという順番になるので、確認結果がOKだと判断できたときには、すべての変更箇所に四角形が付加されています。

Result of comparison by xor
XORで変更箇所に囲みを付けてPDFに書き出した時のイメージ

PDFの不思議な仕様

以前、PDFのデータ形式を覗いてみたことがあります。きっかけは、ほんのわずかなテキスト修正だったのに、Adobe Acrobat DCのPDF比較機能が差異を見つけてくれなかったから。

そこで修正前と後のPDFをテキストエディタで開いてみて驚いたのが、描画要素の並びがかなり違っていたこと。HTMLなら基本的に上から下に要素を記述していくけど、PDFでは違うようです。「どこに描画されるべきか」という情報を持った要素が順不同で格納されていたかと。Acrobatの読み上げ機能でページを読ませても上から順に読み上げてくれないのもそのせいなのでしょう。

それってAmazonの倉庫のような感じかと。Amazonの倉庫では入荷した商品を整頓して格納するのではなく、無造作に格納する代わりにどこに何があるかを厳格に管理しているそうですね。これにより格納場所の選定や整列に迷うことがなくなり業務効率が上がります。

PDFの仕様がそのような思想で策定されたのかは知らないけど、それが正確なPDF比較を難しくしている要因の一つなのかも。もちろん各アプリは表示上の順番を把握した上で比較していくのだろうけど、それでもその仕様のおかげで要素のペアリングが難しいケースも出てくるのではないかと。

脱・貧乏人思考

昨日の続き。貧乏人思考の人はともすると「倹約=お金を使わないこと」と思っているけど、違いますよね。

私の以前の勤務先では15インチモニタ2台が標準作業環境でした。でも、DTPなどのドキュメント制作では画面が小さいことは致命的です。

ただし24インチのフルHDモニタを買おうとしたらローエンドモデルでも13,000円くらいします。中間管理職としては惜しみたくなる額かもしれません。制作スタッフは一人ではないし。

でも、ここで考えなければならないのは負のコストとの比較。例えば平均的な正社員の給与を時給に換算すると2,500円程度とされているけど、小モニタ作業によって毎月累計1時間分ロスが発生していると仮定すれば、年間では24インチモニタ2台分かそこらの人件費が無駄に費やされていることになります。

別の言い方をすると、毎月1時間分の残業代を減らせたならば、24インチモニタの購入費用などは半年で相殺されます。しかもモニタは何年も使えるのだし。

もちろん小モニタによるロスを実際に計るのは難しいけど、1ヶ月160時間働くなら、その中の1時間なんて控え目な数字。実際にはもっと積み重なっている可能性もあろうかと。

貧乏人思考とは恐ろしいもので、それがまた困窮を招くと言う負のスパイラルに陥りかねません。自身も気をつけないと。

コストって何だ?

XORがサブスクリプション方式なこともあってコストについて考えていた際、ふと思い出しました。私が昨年春まで勤めていた都内の某制作会社では、Windows PCと15インチモニタ2台が標準的な作業環境だったことを。

これって残念ですよね。そもそもWindows PCがデザインやドキュメント制作には不利だという点を除いても、15インチモニタ2台は24インチモニタ1台にも劣るので。今どき15インチなんて見かけないから、かなり昔導入したのをそのまま使っていたのでしょう。

でも、ことDTPにおいては画面の大きさで制作効率が大きく変わってきます。15インチだと物理的に狭い上に解像度も低いのでスクロールやマウス操作が頻繁に発生するためです。DTPはラップトップが不利な数少ない分野の一つですね。

CPUはあまりパワフルでなくてもいいけど大画面モニタは必須。制作効率の向上やミスの防止、紙やコピー機の利用代金節約のためにも有効なので。よって在任中に購入申請を出したけど、あえなく却下されました。もはや24インチモニタは1〜2万円。しかも何年も使えるのに。よほどその部署の収支状況が悪かったのか、それともコストに対する考え方が近視眼的なのか。

いますよね。「もったいない」と言って10年以上前の消費電力が大きい家電をいつまでも使い続けているような人が。その時の責任者もそうだったのかも。目先の出費を抑えることしか考えないという。

とはいえ、それって更にその上の立場の人の責任か。「必要な投資なら惜しむな」と言っていないのだろうから。その結果、効率の悪い作業が続いて人件費が余計にかかっていることには気づかないという。

AIに取って代わられる?

10年後AIに取って代わられる職業なんて記事をよく読みますよね。例えばこちらのような。

10年後「AIに取られる」仕事ランキング

ではドキュメント制作はどうでしょう。私は無理かなと思っています。幸か不幸かあまり高度な知的作業ではないから

まあ雑誌の定型ページなんかは自動組版がもっと進むかもしれません。DTPを介さずDBから直接紙面を作ってしまうと。実際、Webサイトの多くはそうなっているのだし。物理的なページサイズの制約があるのでWebの世界よりは難しいけど。

スーパーのチラシの類も理論的にはそうできますよね。紹介すべき商品に強調したい度合いを付与しておいたらAIが判断してうまい具合にレイアウトしてくれるような。そこまでコストを掛けてシステムを開発する人がいるかは別として。

でも、仮にそのような制作が実現したとしても、人間の目による検証は必要ですよね。AIが制作できたとしても読者は人間だし。

そして不具合を見つけたら「どこそこを、こんな風に修正しなさい」という意図を伝えなければなりません。この工程が当面、AIには難しいのではないかと。

ただしAIに職を奪われることはなくても、ドキュメント制作業の作業単価は下がっていくのかも。なるべく効率よく制作して生産性を高めたいところです。