このGW、フランスに滞在していた辛坊治郎さんが「フランスで購入したおにぎりが一個900円くらいだった」とリポートしていました。
まあ、日本風の米や具材も取り揃えれば値段が上がるのは当然だけど、仮に大きく円高ユーロ安に振れたところで1個450円とかにはならない(むしろ日本からの輸入物価は上がる)から為替の問題ではなく、日本の物価が相対的に安すぎるのでしょう。日本が「賃金も上がらないけど物価も安い」を長く続けてきたため賃金も物価も上がった諸外国から取り残されてしまったと。
では何が拙かったかといえば約20年前、小泉政権下での派遣法改正でしょう。派遣は当初こそ「会社に縛られない新しい生き方」と持て囃されたものの、いつしか「首切りしやすい割安な労働力」として定着し、今に至ります。一頃、外国人技能実習生への劣悪な待遇が問題になったけど、それを日本人相手にやっているのが派遣労働や非正規公務員なわけです。
コストカットは企業にとって本能のようなものとはいえ、それを国を挙げてやれば合成の誤謬が起こります。派遣社員は労働者の3%かそこらだとしても、非正規公務員と合わせて240万人超規模で市場としてはなかなかのボリューム。その大半が低賃金、低所得なら安い商品やサービスに頼らざるを得ないけど、それらには中間層や倹約志向な富裕層までもが飛びつくので、提供する側は人件費を切り詰めて価格を抑えせざるをえず、非正規に限らず中小企業の正社員の賃金も抑制されてしまいます。
また、経営者が「賃上げはしないから嫌なら辞めてくれていい。代わりに派遣社員を雇うから」と言える限り、大企業の正社員以外の賃金は上がりません。
ならば日本がやるべきは最低賃金の底上げでしょう。従来の最低賃金をパートタイムワーカー向けと位置付け、別途フルタイムワーカー向け最低賃金を設けて高めに設定すると。それにより派遣社員の活用が割安でなくなれば、企業は良人材の採用や引き止めに賃金を上げざるを得なくなります。できない企業は他社との合併もやむなしです。続ければ日本人が相対的に貧しくなっていくのだから。
それに低賃金労働問題の放置は将来の生活保護受給者を増やし、社会保障費負担として皆に跳ね返ってきます。非正規が多いとされる就職氷河期世代ももう50代前後。ぐずぐずしていられる暇はありません。